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『瀬戸内国際芸術祭2010』の開催により、
世界的に脚光を浴びた瀬戸内海の島々。穏やかな気候と、豊かな自然、
島ならではの、のんびりとした空気やそこに住む人々との触れ合いなど、
島旅には都会の喧騒(けんそう)から離れた非日常的な魅力がある。
実際に島を訪れた人たちからは「心の洗濯ができました」なんて声も。

そんな瀬戸内海の島々の中で2番目に広い面積を持つ小豆島では
醤油づくりの長い歴史があり、そのルーツは400年以上前に遡る。
元々塩づくりが盛んだった小豆島。大阪城築城の石材を切り出すために訪れた
紀伊湯浅の人が伝えたと言われ、酵母の育成と熟成に適した
あたたかな瀬戸内の気候も相まって醤油づくりが発展した。

私たちと馴染み深い醤油の魅力に触れながら、
島の空気に癒される。そんな大人な旅も、いいんじゃないかな。

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小豆島へはフェリーに乗らないとたどり着けないが、
船での移動時間もひとつの楽しみだったりする。
とは言え、出航まではまだ時間がたっぷりある。
高松駅には100円のレンタサイクルがあるので、
それを借りて少し港周辺をぶらぶらしてみよう。

駅から東に向かうとまず『玉藻(たまも)公園』をぐるりと囲むお堀が目に入る。
高松藩主、生駒・松平家の居城だった高松城の残る公園で、高松駅周辺の近代的に整備された中にありながら、歴史的な趣きが感じられて面白い。
お堀は海とつながっているらしく、なんと鯛が泳いでいた!

さらに東へ進むと、昭和初期に作られた倉庫群を商業施設として改装した
『北浜alley』にたどり着く。一見寂れた倉庫群にカフェやレストラン、
ヘアーサロンなど様々な業種が集うオシャレな隠れ家のような空間だ。
古さの中に輝く新しさ、これもまた興味をそそられる。

しかし、本当の目的地はもう少し道なりに進んだ先にある『玉藻うどん』だ。
やはり、香川に来たからには“うどん”。こちらのご主人は何を隠そう
老舗醤油蔵「ヤマセ醤油」の八代目。小豆島は古い醤油蔵が数多く残っているそうで、
今回の旅をスタートするのにぴったりの“うどん店”だ。
1カ月に少量しか生産されないため、
主に一部のうどん店にしか卸されていない醤油を使ったつゆと
揚げたての天ぷらが載った“天ぷらぶっかけ”に舌鼓を打ちながら
ふと時計に目をやると、出航まで30分…急げ。

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  1. 1)園内では国の重要文化財指定を受けた艮櫓(うしとらやぐら)や月見櫓(つきみやぐら)などの見学もできる。
  2. 2)2000年のオープン以来、多くの人が訪れる人気スポットに。
  3. 3)天ぷらは注文が入ってから揚げ始める。酒瓶に入ったつゆはお好みの量を。写真は“天ざる(小)” 700円

玉藻公園 住所●香川県高松市玉藻町2-1 電話●087-851-1521 営業時間●7:00〜17:00(季節により変動あり) 休●無休(12月29日〜31日は休園) 駐車場●57台 料金●大人200円、小人100円

北浜alley 住所●香川県高松市北浜町4-14 電話●087-811-5212 営業時間●各店舗により異なる 休●各店舗により異なる 駐車場●70台

玉藻うどん 住所●香川県高松市北浜町13-1 電話●087-826-5454 営業時間●11:00〜14:00(土・日・祝日は〜15:00) 休●木曜 駐車場●10台
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  1. 1)お店に訪れた人を包容力のある笑顔で迎えてくれる。まさに島のおっかあだ。
  2. 2)お土産として購入できる“健康つくだ煮 三姉妹”(2625円)。添加物は極力使用せず、昔ながらの調味料と国産素材にこだわった商品。
  3. 3)園内にはレストランや自家製のオリーブオイルなどが買えるショップも併設。

オリーブ園 住所●香川県小豆郡小豆島町西村甲2171 電話●0879-82-4260 営業時間●8:30〜17:00 休●無休 駐車場●あり 料金●入園無料

つくだに屋さん 住所●香川県小豆郡小豆島町片城甲44-270 電話●0879-82-6066 営業時間●9:00〜17:00 休●無休 駐車場●あり
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フェリーに揺られること約1時間。
到着した草壁港は、島の観光名所を巡るのにも効率的な港。
1歩島に足を踏み入れると、やっぱりどこか本土とは違う
島独特のゆったりとした空気を感じる。
タクシーで移動すれば楽だけれど、この空気を感じながら
ゆっくり観光したいな、と思っていたところ見つけた“レンタサイクル”の文字。
妙な親近感が沸き、こちらでも自転車で移動をすることに。

港を出て早速東西に道が分かれている。
東に行けば醤油工場の並ぶ『醤の郷(ひしおのさと)』、
西に行けば『オリーブ園』。約2000本のオリーブを栽培し、
更に日本でもっとも古いオリーブの原木もあり、今でも毎年実を生らすそうだ。
こちらもすごく興味があるが、日が沈む前に宿にチェックインしなければ、
と自分達に言い聞かせながら東へ。

この後ろ髪ひかれる気持ちを一気に払拭してくれたのは
道中立ち寄った『つくだに屋さん』の佃煮。
全国から仕入れた小豆島醤油と合う厳選素材を使い、
無添加の佃煮を試みている素材派の優しい味。うん、一つ目のお土産はこれで決定だ。
また、ここの名物は佃煮だけじゃぁない。店の看板に似顔絵も描かれている
妙に親しみ深い顔の“おっかあ”に出会えたらラッキー。
「まあこれ食べてみーな」なんて言いながら、
みんなに愛される人懐っこい笑顔で迎えてくれる。
こんな人との出会いも旅の思い出のひとつ。
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県道28号線を東に走っていると、ところどころ昔ながらの民家や蔵、
工場などが並んでいて醤油のみならず、ごま油や素麺など
小豆島は様々な産業が昔から盛んだったことがうかがえる。
さらに自転車をこぐこと約20分、ついに“醤の郷”と呼ばれる
明治時代には約400件もの醤油蔵が軒を連ねた町並みに到着。

昔ながらの町並みを保存した地域は全国に数あるが、
何とも香ばしい“醤”の香りが風にのって香ってくるのはここぐらいだろう。
最盛期に比べればかなり数は減ってしまったが、だからこそ今でも
じっくり時間と手間をかけ、真摯に醤油づくりを行っている醸造所が数多く残っている。

その中のひとつ、『ヤマロク醤油』は予約なしでも蔵を見学できる。
蔵に入るとすぐ、もろみや土壁に付着する菌の鼻を刺さすような匂い、
高さ約2mの大杉樽、そして目を閉じれば息づかいまで聞こえてきそうな
築100年以上の醤油蔵の迫力にただただ圧倒される。
過剰な生産効率を追い求めず、代々受け継がれてきた製造法を身体ひとつで守り、
熱心に蔵の案内もしてくれる主人の姿勢にも、感銘を受ける。

その後向かった『マルキン醤油記念館』は、明治40年創業の
『マルキン醤油』の歴史と、島全体の醤油文化を今に伝えてくれる。
創業当時に建てられた圧搾工場を改装した館内には、
30石ものもろみや醤油が入る大桶(おおこが)など、
これも希少性の高い品が数多く展示されている。
たっぷり歴史に触れた後は、売店で『しょうゆソフトクリーム』をぺろり。
最初は恐る恐るだったけれど、キャラメルに似た味わいであっという間に完食。

今日は一日中自転車をこいだので、足も疲れてきた。
日も暮れ始め、自然と自転車のハンドルを
予約してある宿の方向に向けて出発。

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  1. 1)ヤマロク醤油のもろみ蔵内。樽、土壁、木の柱など100年以上前のまま残っている。
  2. 2)5代目の山本康夫さん。小豆島の醤油造りの文化と歴史を守りつづける人。
  3. 3)マルキン記念館の向かいには今も醤油づくりが行われている工場や蔵が。

ヤマロク醤油株式会社 住所●香川県小豆郡小豆島町安田甲1607 電話●0879-82-0666  営業時間●9:00~17:00 休●無休 駐車場●5台 料金●見学無料

マルキン醤油記念館 住所●香川県小豆郡小豆島町苗羽甲1850 電話●0879-82-0047 営業時間●9:00〜16:00(7月20日〜8月31日、10月16日〜11月30日は16:30まで)1月4日〜2月末の平日は要予約 休●10月15日、12月28日〜1月1日 駐車場●25台 料金●大人210円、小中学生100円
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  1. 1)宿全体から「いらっしゃい」と暖かく出迎えられている声が聞こえてきそう。
  2. 2)「お」の部屋の寝室。窓から見える醤油蔵などの町並みにも癒される。
  3. 3)“いぎす”や“小引き”と呼ばれる小豆島の懐かしい郷土料理も味わえる。

島宿 真里 住所●香川県小豆郡小豆島町苗羽甲2011 TEL●0879-82-0086 営●チェックイン14:00〜 チェックアウト11:00 休●不定休 駐車場●あり 料金●2万3000円〜(平日1泊2食付き・2名利用時1名分)
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マルキン醤油の工場やもろみを熟成させる蔵を横目に眺めながら
少し山の手に行くと、民家の中にひっそり奥ゆかしく佇む『島宿 真里』が見えてくる。

醤油蔵だった建物の梁や基礎などの古材を用いてリノベーションした客室、
エントランスや通路にさり気なく置かれた調度品や家具、
朝食や食後の語らいの場として国の文化財指定も受けた囲炉裏のある母屋など、
この宿のどこにいても、モダンな中に郷愁を混ぜたような独自の趣を感じる。

今日泊まる「お」の部屋は、離れになっており、まさに隠れ家。
2010年の春にリニューアルされたばかりで、半地下に洋間、
1階には掘りごたつのある居間、2Fには寝室と浴室と3つの表情を持つ。
こんな贅沢してもいいんだろうか、と思えてくるが今日ぐらいは
ゆっくりと過ぎ行く時間を楽しみたい。携帯電話の電源は切っておこう。

自然ともう疲れはどこかに忘れていたが、外湯露天もある「里枝の湯」に浸かり
ほっこり体を温めた後はお楽しみの夕食を味わう。
“しょうゆ会席”と銘打たれた夕会席は、瀬戸内海であがった新鮮な魚貝や、
地場産品、自家栽培の畑野菜をそのときの一番美味しい調理方法でいただける、
言わば主のおもてなしの心が詰まった瀬戸内・小豆島のフルコース。
醤油へのこだわりはもちろん深く、自家製の“もろみ醤油”や、
各醤油蔵の“再仕込み醤油”、“香り醤油”など数種類を使いわける。
この宿のように見た目の派手さを求めるのではなく、
贅沢さの本質を考えつくした結果が一品ごとに優しく詰まっている。
そう思うと心も自然と温かくなるようだった。

ゆっくり進む時間や、豊かな自然はもちろんこの島の魅力。
だけどここでは、ひっそりとたくましく積み重ねた人々の営みを感じ、
そのパワーもわけてもらえる。
だから島旅はおもしろい。

※醤(ひしお)とは、塩を加えて発酵させた塩蔵品の総称のことで、米や豆を発酵させた「穀醤」が醤油の原型といわれている。

周辺観光スポット

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